「私、理香子さんの右目が義眼だったなんて、全然気付かなかった」
「普段は本人も忘れてるんじゃないかって思うほど堂々としてるしな。そりゃ、義眼になった当初はつらかったのかもしれないけど、そんなの俺が生まれる前の話だし。俺が知ってる限りでは、全然気にしてる様子はなかった」
じゃあ、やっぱり私が来たせいで、理香子さんはつらい過去を思い出したのだろうか。
「とりあえず義眼屋に行ってるならそのまま買い物に行くはずだから、ちょうど花火が終わる頃まで帰ってこないだろ」
「七都は本当に行かないの?」
「俺は行かない。仲間には誘われたけど、人ごみとか面倒だし」
ダイニングの椅子を引き出して、どかりと座る。ポケットから携帯を取り出す彼を見ていたら、いつかの放課後の場面を思い出した。
「女の子とはいっしょに行かないの? 噂を女よけって言ってるぐらいだし、しょっちゅう告白されてるんじゃ」
「うるせえな、どうでもいいだろ」
嫌そうな顔をされてちょっとムッとする。
「その口調、学校でやったらみんなびっくりするんじゃない?」
なにせ、七都は家とは違って学校では笑顔を振りまく爽やかくんなのだ。
彼はますます嫌そうに眉をひそめた。
「もうみんな知ってる。とりあえず教室とか廊下では波風立てないようにおとなしく振舞ってるけど、仲いい奴といるときはこんなもんだよ」
「へえ……」
それでも七都は二重人格だと陰口をたたかれたり、嫌われたりはしないらしい。
わかる気がした。七都は突っぱねるような物言いをするけれど、そこには照れや喜びや温かな感情がまじっている。彼と話をして、私もようやくそれを感じ取れるようになっていた。
「とりあえず、出かけるのはいいとして、問題は母さんがいつ帰ってくるかだな。お前が家にいないときだとまずい」
「どうにかして誤魔化せるかな……」



