遊馬のいる二年A組にたどりつくまでに、手のひらに汗がにじんだ。表情が読めなくても、顔の角度や方向で私を見ていることはすぐにわかる。穴顔にもすっかり慣れたと思っていたけれど、慣れない廊下のせいか、じわじわと恐怖がこみ上げた。
2年A組の教室をのぞいても、それは変わらなかった。何を考えているのか、何を見ているのか、感情が読めない穴顔の生徒たちは、教室に押し込められた獣の群れみたいだ。
私はきびすを返した。ここにいると、なぜだか泣きそうになる。置いてけぼりにされたような、心細い気分になる。
ここは母親の罪でけがされた世界だ。そう突きつけられているようで、息ができない。
弾けるように笑う、顔が見たい。
マリちゃん――
助けを求めるように階段まで戻る途中、表情が目に飛び込んできた。穴顔の男子生徒と楽しげに笑い合っている、男の人の顔。
「遊馬っ」
私が腕をつかむと、彼は驚いたように目を見張った。
「え、えっ? ミズホちゃん?」
こわばっていた気持ちが、ほろりと解ける。お湯を浴びせられた氷のように、あっというまに溶けていく。
「花火、を、いっしょに……」
私が切れ切れに言うと、遊馬はあわてたように周りを見回した。それから私の腕をつかんで歩き出す。
「ちょっとこっちに」
人気のない非常階段のドアを抜けて、彼が振り返る。困ったように眉を下げる表情は、これまで目にしたことがないもので、私は自分が先走ったことに気づいた。
やっぱり、花火なんて誘わないほうがよかった。そもそも、二年の教室を訪ねてきたこと自体、迷惑だったのかもしれない。
「なにかあった?」
心配そうに言って、彼は見てはいけないものを見てしまったというように、そろりと目を逸らす。
「涙、出てるけど」
「えっ」



