「だって、どうでもいい子なら自分から積極的に関わらないよ」
断定されて、私は考え込む。遊馬との出会いから思い返してみたけれど、彼が積極的に私に関わろうとしたのはパルクールを教えてくれたときくらいな気がする。
「それに、純粋に花火、見たくない?」
いたずらっぽく笑うマリを見て、私は「じゃあ」と提案する。
「マリちゃんも一緒に行こうよ」
遊馬とふたりはいくらなんでも恥ずかしいけれど、何人かのグループなら大丈夫かもしれない。幸い、理香子さんは花火の日は帰りが遅いと言っていたし……。
ふと寝癖の跳ね返った顔が思い浮かんだ。
せっかくだから、七都も誘ってみようかな。
彼がいるなら、理香子さん対策に手を貸してくれるかもしれない。都合よく考えすぎかもしれないけど、七都ならきっと協力してくれる、そんな気がした。
「ええ? サルの人とふたりで行けばいいのに。……わかったよ。とりあえず誘っておいで」
「え、マリちゃんもいっしょに」
「私、面識ないもん。誘うくらいひとりで行きなって」
「せ、せめて二年の廊下まで……」
「しょうがないなぁ」
席を立って歩き出す彼女に、私はあわてて続く。
「え、今から? あと十分もしたらホームルーム始まっちゃう」
「善は急げって言うでしょ」
有無を言わさぬ彼女に引きずられるようにして私は階段を上った。二階に上がっても、やっぱりみんな穴顔だ。ただし上級生は立ち居振る舞いや制服の着方がこなれていて、一年とは印象が違う。二年の廊下に漂うオーラに、足がすくんだ。
「や、やっぱりやめよう。もう誰かと行く約束してるかもしれないし」
人懐っこそうな遊馬のことだから友達も多いだろうし、もしかすると彼女だっているかもしれない。いまさら気づいて、私は及び腰になった。それでもマリは階段を下りさせてくれない。
「そんなの、誘ってみなきゃわからないじゃない」
「ほら、行った行った」と背中を押されて、私は廊下を歩き出す。



