「べつに。お前を誘っていいかって訊かれたから、好きにすればって答えただけ」
率直な返答に、私は息をつく。川崎七都は、私とちゃんと話をしてくれる気があるらしい。
「あの……一度、ちゃんと謝りたくて」
七都が横目で私を見る。目も、鼻も、口も、理香子さんのそれと形がよく似ている。
「私がここに来たせいで、七都、くんは」
「謝るようなことを何か、俺にしたのか?」
強い口調に私は声をひっこめた。七都は睨みつけるように私を見ている。
「謝ってなんかほしくねえよ!」
吐き捨てられた声に、硬直する。私を見て、彼は「はあ」と肩を下げた。
「そういうのが、いらいらすんだよ」
七都は顔を伏せ、洗い立ての髪をがりがり掻いた。椅子の上に片足を上げ、「だって、しょうがねえだろ」と乱暴に言う。
「俺とお前が仲良くしゃべってたら、おふくろはますます壊れる」
心の内側をさらけだす言葉に、私は息を呑んだ。
「だからって俺は、お前の時間を奪ってまで弁当なんか欲しいと思わねえし、関わらないようにしようと思っても、やっぱり気になるし……」
七都はあえぐように息をついで、声を絞り出した。
「なにより、自分の親がお前を理不尽に虐げてるところなんて……見たくない」
彼の表情は理香子さんにそっくりだ。
でも、理香子さんと違って、やり場のない怒りに苦しんでいたのだろうか。
彼が心のうちに溜めていた憤りは、体内を駆け巡って、彼自身を苛んでいたのだろうか。



