「ちょっと何なのあんた、そんなとこに突っ立ってないで、さっさとやることやりなさいよ」
「はい、すみません」
冷蔵庫横のホワイトボードには、理香子さんの食べたいもの、つまりは今日の献立が書かれている。
食器棚に置かれた貯金箱の蓋を開け、お金を取り出して、私はソファのほうを見ないように静かにリビングを出た。
勉強は苦手だし運動も得意じゃない私にとって、料理は唯一の取り柄だ。
働いていた母の代わりに、小さい頃から台所に立ってきたから、和食も洋食も一通りのものは作れる。味付けで理香子さんから小言をもらうことはあっても、食材を無駄にするような失敗はしたことがない。
玄関を抜けると、ガレージから自転車を引っ張り出している川崎七都と目が合った。
学校ではついぞ見たことのない険しい表情で、彼は私を睨む。
「なんだよ、こっち見んな」
同族嫌悪、という言葉が思い浮かんだ。
彼と自分の顔を並べて見たことはないけれど、もし彼と私が同じクラスだったら、クラスメイトの誰かひとりくらいは私たちの関係を怪しむかもしれない。その程度にはきっと、似ているのだろうと思う。



