でも私がそう言うと、彼はまた綺麗な笑顔を作った。

「・・・じゃあ、車停めて食べてもいいですか?待たせますけど」

「あ、はいはい、是非そうしてください!」

 私の返事に軽く頷く。そしてハンドルを切ってユーターンさせると、迷いなく車を走らせた。

 店に戻るのかな?それともどっかで路駐でもするんだろうか。私は助手席で温かい紙袋を抱える。

 すると暫く走った後、意外にもショッピングセンターに入って行くから驚いた。

 え?ここのどこで食べるつもりだろ。もしかしてこの中のフードコートかなんかに持ち込んだりしないよね?それはちょっと私、抵抗があるぞ~。

 色々考えている内に、車はドンドン上がって行く。そのまま屋上に入って、私は思わず声を上げた。

 そこからは素晴らしい景色が望めた。高層ビル群が立ち並び、その間を高速道路が縫っている。全体が曇り空で白くかすんで、ぼんやりと幻のような、淡い景色を作っていた。

「あら、いい眺め」

 思わず呟いた私に高田さんは口元を緩める。エンジンをかけたままで広い駐車場の端っこに車を停め、私が膝の上に置いている紙袋に手を伸ばした。

「・・・時間があれば、ここでよく食べるんです」

 へえ。私は紙袋から中身を差し出しながら思った。・・・高層ビルが立ち並ぶ都会の景色が一望できる。高い場所にあって、夜であれば素敵な夜景も見れるだろう。ここに、よく来るんだ・・・。