「キリト……?」
キスから顔を上げると、彼はいつの間にかスゥスゥ…と寝息を立てて、眠り込んでいた。
「キスの途中で、寝るなんて…ねぇ、キリト…?」
「うん…?」前髪がかかる長めの睫毛をしばたいて、じっと私を見上げるけれど、
「……眠い…ごめん、アヤ…」
またすぐに閉じてしまいそうにもなる目蓋に、
「眠いのはいいけど、仕事は……? 明日とか、仕事は大丈夫なの…?」
必死で呼びかける。
「ん…大丈夫…。……マネージャーから、モーニングコールがあるから……。
俺が、なかなか起きないんで…予定の二時間前ぐらいに、電話が入る……」
「二時間も、前に…?」
ちょっと呆れ気味にもなる私に、
「うん…コールが着たら、起こして…アヤ…」
言って、キリトは私の膝を枕に寝入ってしまった……。
呆れついでに、なんだかおかしくもなってきて、私は膝上のキリトの頭を撫でると、
「おやすみ…」と、テーブルの後ろのベッドに、自分の背中をもたせかけたーー。