「あの・・・」

 言いづらそうに横山が口を開く。

「何だ?」

「その・・・。
 チカさんにはお会いできたんですか?」

 それが目的でイギリスに行ったのだから、どうなったのか知りたいのは当然だろう。


 残念ながら、横山の期待に応えられない俺は苦々しく笑った。

「会う前にテロに巻き込まれたよ」


 そんな俺に、横山はとたんに申し訳ない顔つきになる。

「それは失礼いたしました」

「いや、気にするな」

 頭を下げる彼の肩を軽く叩く。

「またイギリスに行けばいいだけのことだ。
 近いうちに出発する」


「ですが、社長と副社長が反対されるのではないですか?
 前回は知られずに出国できましたが、またとなると・・・」

 横山は俺の味方ではあるが、桜井グループの社員でもある。

 社長の動向を心配するのも無理はない。