あの頃の想いをもう一度

「ゆっくりお前の体質を治していくつもりだった。今は触れられなくても、いつか触れることが出来るように…」

私は、いつの間にかドアノブに手をかけて聞いていた。

だけど、回すことが出来ない。

「隼人のやった事は許せない。でも、あいつは…、自分から皐月に嫌われようとしていた」

「どういうこと……」

「隼人の母親は、自殺してるんだ」

「えっ…!」

自殺してるって……。

「それも、隼人本人の前で……」

私は、ドアノブから手を取る。

「それは、お前の家に遊びに行く前の話だ。それで隼人は…、皐月に会った」

私は、隼人と初めて会った時のことを思い出す。

その時も雨が降っていて、隼人は雨に濡れていた。

『……』

確か私の家の前だったけ?

私は、彼を見て傘を差し出した。

『どうしたの?』

隼人は、暗い表情をしていた。

『母さんが死んだんだ…』

『えっ!』

隼人は、その場でうずくまる。

『僕のせいなんだ!僕が居なければ、母さんは……』

私は、隼人の頭に手を乗せて、優しくなでる。

『ごめんなさい。何て言えばいいか分からないけど』

私は、隼人にカーネーションの花を渡した。

『これは……』

『カーネーションだよ。花言葉は、永遠の幸福。私は、貴方には居てほしい。だから、笑って』

私は、隼人に微笑みかけた。

それにつられて、隼人も笑顔になってくれた。

「隼人……」

「つまりあの時、皐月が俺達に刃物を向けた時、隼人は皐月と母親が重なって見えたんだと思う」