私の記憶の錠前に、ヒビが入る。

「被害者は、僕達の方なのに」

錠前が外れ、私の記憶の扉がゆっくり開かれる。

「でも、一番の被害者は…、僕じゃなくて遼河だよ」

私は、頭痛の走る頭に手を当てる。

私の頭の中に、記憶が流れる。

「私が……二人を……」

私の目から涙がボロボロこぼれる。

「皐月?!」

私の異変に気づいた遼河が、私の傍へと寄る。

「皐月、どうした?!」

遼河が私に手を伸ばす。

「やめて!」

私は、その手を払い除けた。

「ほら、まただ」

その言葉に我に返る。

「こ、これは……」

「君は、僕達を物扱いしたんだ」

私は、自分の手のひらを見る。

「皐月と遼河は、許嫁同士だったのに」

「え……」

「隼人!やめろ!」

遼河が、私の許嫁……?

じゃぁ、月子が言っていたお見合いって、遼河のことなの?

「まぁ、君のせいでその話は破談になったけど…」

私は、昔の記憶を思い出した。