私たちの姿を見た遼河は、怒りへと表情を変えた。

「隼人…テメェ!!!」

隼人は、私から離れる。

「殴ったら停学だよ」

「くっ……」

遼河は、上がる腕を下げる。

私は、急いでワイシャツのボタンを閉めた。

「皐月、大丈夫か?」

「う、うん……」

「何された……」

遼河に色々と説明をしたかったけど、できなかった。

だって、遼河に言いたくなかったから。

「キスしたんだよ。それで、自分は男性不信ってことを分からせるため」

「キス…、男性不信?!」

遼河は、隼人を睨みつける。

「だから皐月をこんな目に合わせたのか?お前可笑しいぞ!」

「可笑しいのは、皐月の方だよ!」

隼人が大きな声でそう叫ぶ。

その声を聞いて、私の体は更に震える。

怖い、怖い、怖い!!

隼人の声を聞くだけで、そう感じた。

「皐月は、僕達を傷つけたのに、覚えていないんだよ!皐月の方がおかしいよ!」

「それは、仕方ないだろ!」

「仕方なくないよ、彼女は被害者ぶってる!自分は、可哀想な子なんだって!」

被害者ぶってなんかなかった。

昔のことを思い出したくないのは、あの目や視線を思い出すから。

でも、その記憶の中に私は、二人の記憶も閉じ込めている。