あの頃の想いをもう一度

「なっ?!」

そのまま彼女は背負投の体勢に入ると、コンクリートに男の背中を勢いよく打ち付けた。
「がはっ!」

苦しそうに声を上げる男を見下ろしながら、彼女が更に睨みを効かせる。

「触らないでって……言ったでしょ?」

彼女はそう言い捨てると、男たちの間を通ってその場を後にしたのだった。

「お、男嫌いとは聞いていたけど……まさかここまでとはな……」

彼女の嫌いな物――それは男だ。

それだけが唯一、克服することが出来ないのだ。

「とりあえず、男が嫌いってことは確認出来た。後は――」
 
俺はスマホの画面を指先で操作しながら、ある場所へと電話を掛ける。

「あ、もしもし……例の件引き受けます」

そう言った俺は、ニヤリと軽く笑ったのだった。