あの頃の想いをもう一度

しかし、私からしたらその笑顔は、不気味で優しい笑顔に見えるのだ。

私は何も言わず、直ぐに月子の後ろに隠れた。

「……申し訳ございません。お嬢様は、殿方が苦手で」

「構いませんよ。事情は、紗知江(さちえ)さんから、伺っていますから」

理事長の口から、お母様の名前が出てきたことに驚いた。

何でこの人がお母様のことを知っているの? 

まさか……お母様を脅して、私を無理矢理ここへ通わせる気なのだろうか?! 

それとも、私を男たちの前にさらけ出し、恥ずかしいことをさせるつもりなのか?!

……駄目だ、考えがどんどん悪い方へと傾いて行く。

「……申し訳ございません。これは予想以上でした。普段なこんなこと、ないのですが」

「と、とりあえずお座りください」

月子に手を引かれソファに座りかけた時、月子の手が離れたと分かった私は、瞬時にソファの後ろに隠れた。