あの頃の想いをもう一度

「んで、特訓の内容は――」

遼河は、私の耳元で囁く。

それがくすぐったくて、私は目をつぶる。

「男との距離感になれろ」

「き、距離感って言われても、相手が遼河だからそんなの」

「相手が俺だからって、こんなに近くで目を合わせたことはないだろ」

「そ、そうだけど」

遼河が私の顔を覗き込む。

遼河の顔が近くなり、私は頬を赤く染めた。

今まで、こんな近くで遼河を目を合わせたことはなかった。

これが今日の特訓だというなら、私の心臓がどこまでもつか分からない!

(やばい、目が回ってきた)

恥ずかしさのあまり視界が歪む。

そのせいで、遼河の顔も歪んだ。

「なに目回してんだよ」

遼河は少し苦笑する。

「だ、だって!恥ずかしくて」

「昨日したことに比べれば、こんなの序の口だ」

「へ?!そうなの!!」

いったいどんな恥ずかしいことをしたって言うのよ!

「ねぇ!そろそろ教えてよ!昨日なにがあったの?」

「それはお前が自分で思い出せ」

「そんなぁ」

私はがっかりして肩を落とす。

昨日のことなんて、この先いつ思い出すか分からない。

そんな私の様子を見ていた遼河は、くすくすと笑っていた。