【皐月】

「ん…」

目を覚ますと、部屋の天井が瞳に映る。

「あれ…ここ?」

体が熱くてだるい。

起き上がる気にもなれない。

「何が…あったんだっけ?」

何があったのか思い出すまで、そんなに時間はかからなかった。

でも……。

「ここに来るまでの記憶が曖昧で、何があったのかはっきり思い出せない」

いつ自分の部屋に運ばれたのかも覚えていない。

「今何時だろ?」

部屋の時計を見た時、時間は七時を回っていた。

「やばっ!起きなくちゃ!」

遼河の朝食の用意してない。

急いで立ち上がったせいか、視界が揺らぐ。

「あれ…?」

そうだった、私熱があるんだった。

でも、遼河の朝食用意しなくちゃいけないし、学校は休むわけにはいかない。

部屋から出てリビングに向かう。

「起きて大丈夫なのか?」

「遼河…」

遼河は、椅子に座ってパンを口にしていた。

「朝食作ったの?」

「あぁ、俺でも料理くらいできるさ」

そう言ってるけど、パンしか食べていないのは何故に?

「ごめん、今なにか軽く作る」

「無理するな、倒れられても困る」

「ご、ごめん」

私は、その場に立ち尽くす。

(昨日のこと謝らなくちゃ、遼河を怒らせちゃったし)

「どうした?」

遼河は、いつもの遼河だった。

怒っているようには見えない。

「遼河…、昨日はごめんなさい」

「…はっ?」

何言ってんだこいつ的な目で私を見てくる。

その視線がやたら痛い。