あの頃の想いをもう一度

月子は身だしなみを整え、軽く扉をノックした。

「どうぞ」

それに応えるように、部屋の中から男の声が聞こえた。

その声に私の肩が大きく上がり、一歩後ずさる。

その姿を見た月子は、軽く溜め息を吐くと言う。

「大丈夫ですよ、お嬢様。私が付いていますから」

「そ、それでも……男が居るのは嫌よ!」

私は月子の手を振り払おうと、ブンブンと縦に勢い良く振った。

しかし、思った以上に力強く掴まれているのか、振り解くことが出来なかった。

この細い腕のどこに、そんな力があるというのだ?! 

嫌がる私を横目に、月子は深々と溜め息を吐いた。

「お嬢様、これはお嬢様の為なのですよ?」

「私の為って……? どこがよ!? 男の中に放り込むことの何処が、私の為なのよ!!」