あの頃の想いをもう一度

「俺は、どこにも行かない」

「……絶対だよ」

皐月は、服をつかむ。

皐月が怯えていたこと。

それは、俺が離れていくと思ったことだ。

まぁ、実際そうなるかもしれなかったけど。

皐月の傍には、隼人が居ればいいと思っていた。

だけど、皐月は俺に傍に居て欲しいと言ってくれた。

こんな俺にも…。

「ねぇ…遼河…」

皐月は、じっと俺の顔を見て聞いてくる。

「私のこと…、どう思ってる?」

俺の胸が高なった。

そんな顔で聞かれたら。

理性が保てなくなる。

「なんで、そんな事を聞くんだ?」

俺は、優しく聞き返す。

「だって、遼河は私の許嫁だった人で、私はそれを知らなかった。遼河が許嫁なら、私を好きだったのかなって思って」

「それで?」

「隼人は、私を好きと言ってくれてた時、遼河は私をどう思ってるのかなって」

皐月は、俺に顔を近づける。

「幼かった頃の私は――!」

皐月は、そこで言葉を詰まらせた。

「どうした?」

「……今の私には、恋というものがどういうものか分からない…。でも―――」

皐月は、切ない表情で言う。

「昔の私は、遼河のこと好きだったと思うの!」

その言葉に、俺は目を見開く。

「小さい頃の私は、遼河は特別な存在で、一緒にいて心が温かくなった」

俺は、皐月の頬に触れる。