「へ…、変な手つきで……。体を……触られた…」

私の体は、更に震える。

「それは、父さんたちは知ってた?」

私は、左右に首を振る。

「知ってたのは…、母上だけ…」

「そうか……」

隼人は、震える私を抱きしめる。

「僕も皐月の体質治すの手伝うよ」

「そ、そんな!迷惑掛けられないよ!」

「手伝わさせてよ、皐月に恩返ししたいんだ」

隼人の気持ちが嬉しい。

隼人と話せてよかった。

取り戻せてよかった。

私は、心からそう実感できた。

「ありがとう、隼人」

「おじさんは、皐月と会わなくなってからどうしてるか知ってる?」

「前に一度、私に会いたいって言って家まで来たけど、月子に追い返してもらった」

「今でも来ているのか」

隼人は、数秒考え込む。

「明日遼河と話すよ」

「うん」

これで、遼河と隼人の仲が元に戻るといいな。

「それで、その遼河のこと」

「あっ…」

私の頬が熱くなる。

「遼河のこと、好きなの?」

「……分からない。ねぇ、教えて隼人!」

遼河のこと、ちゃんと知りたい。

「私は、遼河が許嫁だってこと知らなかった」

「遼河は、確かに皐月の許嫁だった。でも、皐月があんな事になって、皐月の母さんが許嫁のことを無かったことにしたんだ」

「母上が…」

でも、何で遼河が私の許嫁ってことを隠していたんだろう?

「僕が話せるのはこれくらい。遼河の気持ちは、直接あいつから聞いた方がいいと思う」

「分かった」

遼河が素直に話してくれるとは、思っていないけど。

「今度は、僕の話だけど」

「うん」

「さっき言った、もう一人の僕のこと。今は大人しくしているけど、こいつは本当に危ないんだ」

さっき、私を殺そうとしたのも、その人に言われたんだね。

「皐月が僕を受け入れてくれるって言ってくれて、凄く嬉しかった。だからなのか、あいつは前より大人しくなってるかもしれない」

「そんな直ぐ分かるものなの?」

「あぁ、あいつは毎日僕に囁くんだ、“殺せ"とね」

「絶対誰も殺さないで!」

私は、隼人に人殺しになって欲しくない。

「大丈夫だよ。皐月が僕を救ってくれたから」

な、なんかさっきの隼人と比べると、ちょっと素直になってる気がする。

でも、これが本来の隼人なんだろう。