あの頃の想いをもう一度

「遼河も好き」

皐月は、僕の手を取る。

「ごめんなさい隼人。私は、貴方を傷つけた。隼人は、許してくれないとは分かっている。でも……」

月の光が皐月の顔を照らす。

「私は、昔自分で壊したものを取り戻したい。隼人を取り戻したい。また、昔みたいに笑いたい」

その時の彼女の笑顔は、とても綺麗だった。

「私のこと許してくれなくてもいい。でも、隼人には傍にいて欲しいの」

僕は、皐月を強く抱きしめる。

「あんなの……嘘だよ……」

「嘘?」

「僕が皐月を嫌いになれるわけが無い」

ずっと押し殺してきた気持ちが、一気に溢れる。

「僕に居場所をくれた皐月を、僕に光をくれた皐月を嫌いになれるはずがない!」

「で、でも」

僕は、皐月を抱きしめる腕に力を込める。

「怖かったんだ!また失うんじゃないかって思って…。母さんみたいに、皐月を壊してしまうんじゃないかって」

「それで、私の傍から離れたの?」

「それもある。でも、僕の中にもう一人の僕がいて、僕に囁くんだ。僕を不幸にする者を殺せと。その中に、皐月も含まれてて」

皐月は、じっと僕の顔を見る。

「それで、私を殺さないように突き放した?」

僕は、軽く頷く。

「でも、僕がどんなに突き放そうとしても、君は僕に寄ってくる。どうすればいいか分からなかった」

「……」

「皐月は、僕を取り戻したいと言ってくれた。だけど、僕は昔には戻れない」