桜が舞い散る中、彼女は肩先まである黒髪を揺らしながら、足早に校外へと向かっていた。

白い雪のような肌、線を書いたような唇に、スラッとした体つき。

彼女とすれ違った男たちは、彼女のことを一目見たら必ずと言って良いほど振り返るのだ。

それほどまでに、彼女はどの女の子たちよりも美しく見える。

彼女の名前は、春屋皐月(はるやさつき)。

春屋財閥のご令嬢だ。

父親は国を代表する大手スポーツメーカーの社長で、母親は海外でも有名な一流ブランドのデザイナーだ。

そんな二人の間に生まれた彼女は、成績優秀、スポーツ万能、茶道、生花、家事料理など、全てを完璧に熟す存在なのだ。

しかし、そんな彼女にも苦手な物が一つあった。

それはが――

「やあ、春屋さん」

彼女の目に前に、数人の男たちが立ちはだかる。