「こだわりも大事ですけどこれじゃ決まらないですよね〜」

「だな。とはいえ妥協はできない」

「ですね。今後のモチベにも関わってきますしね」

 うなだれる二人を前に私はぼんやりするのをやめ、それなりに考え案を出してみた。

「プレジャーディレクション、は?」

 英語でプレジャーは楽しみ、ディレクションは方向。

「二人の言葉を参考にしてみた。何のひねりもないしまんま過ぎてダサいかな? やっぱり別のかっこいいのにしよっか」

 言った後に恥ずかしくなって取り消そうとすると、空と愛大はみるみる元気を取り戻して目をキラキラさせた。

「楽しむ方向性のバンドって意味か。いいなそれ! さすが作詞担当!」

「アタシも気に入ったよ。プロのアーティストって感じ! プレジャーディレクションに決定だよ!」
 
 え!? こんなんでいいの?

 提案しておきながら戸惑う私を置いて、愛大と空は流れるように今後の計画を立てていった。放課後の練習時間についてや楽器のメンテナンスのこと。

 ゴールデンウィークを前に私達は動き出した。










プレジャーディレクション始動(終)