「鳴女を殺したのが天稚彦というだけで、謀反の疑いがあると片付けることが出来る。
あいつの胸を貫いていたのはあいつが射った矢だ。天に届いて、天から放たれた」
震えることしか出来ないわたしに、彼は優しく語りかけた。
「…決して自分を責めるな。あいつが死んだのは矢のせいじゃない。ねーちゃんのせいだ」
「わたしがもっと考えればよかったんだ。鳴女なんて殺さなければ…」
「いいや、お前は何も悪くない。むしろよくやったと思うぜ?自分の身分をわきまえた片思いなんてなかなかできねぇもんだし」
やけに優しい彼が、このときばかりは嬉しかった。
「辛い役目をさせちまったな。これは俺もお前に同情する」
「うるさい、うるさ、い……」
もう、本当に嫌だ。
彼はわたしのせいで死んだのだ。
わたしがこんな単純な罠、見抜いていれば死ななかった。
お色気作戦だって、両者の思いを引き裂くため。
決して達成できない彼の任務は、帰ってこさせないため一一。
ヒントはたくさんあった。
見抜けなかったわたしが悪いのだ。
「ひ、ぅ……っわぁあああああっ」
たまらず喚いたわたしを、素戔鳴尊は優しく見つめてくれた。
1匹の鬼と化したわたしは、ただ感情のままに月に咆吼した。



