「だめだ、そんなことしちゃ、ゆ、許さないぞ……っ」
「天稚彦さま、あなたは尊いお方。
決して消えてはなりません。
もちろんわたしにとっても、誰よりも尊いお方です。
かわってわたしは取るに足らない代わりのきく鬼」
涙というものはなかなか止まらないもので。
あなたの姿を焼き付けたいのに、なかなかうまく見えない。
これうざいなぁ。
「あなたが悲しんで下さった事実だけで救われます。
……わたしをわたしにしてくださったのは、あなたです。ありがとうございます」
そっと患部に手をやり、意識を集中させる。
「だめだ……!僕は君を殺すために笑わせたんじゃないっ」
最後まで優しいことを言ってくれる人だ。
ぼろぼろと、消し炭のような変幻が剥がれる。
消し炭は落ちる度に消滅して、掃除いらず。
わたしは角が出たおかげで呼吸がしやすくなったことに安堵し、目を閉じ一一
「……綺麗」
え?
「君は、そんなに美しい鬼だったのか…」
思わず口をあんぐりと開けてしまった。
この緊急事態に何を言ってるんだ。



