「まさか…泣くのも初めて?」
「ええ、ええ……そうです。自分の涙を見るのは、初めてです…」
「そっか…泣かせちゃってごめんね」
「いいえ」
首をふって、わたしはえづきなら声を出す。
もう、叫びたいほど嫌だった。
何もかもが本当に嫌で、どうか私を消してくれと叫び出したいほど。
だけど、叫ぶよりいうべきことがあるのだ。
「……あなたが…教えてくれたんです。授けてくれた、目覚めさせてくれた。笑うことも泣くことも、あなたがいたからできたんです」
拭ってくれた手を握り返す。
愛の言葉の代わりに。
「だから、わたしは一一お礼がしたい」
こんなわたしでも、きっと血止めくらいにはなるとも思うから。
息があるとわかった時からしようと決めていたこと。
それは……
「天稚彦さま。わたしは人間に化けている鬼です。
ちょっとだけ特殊で、だから霊力もあります。
あなた様には及びませんが、それでも無いわけではありません。
だから一一わたしをあなたにあげます」
霊力になる、すなわち、体を失う。
霊力になって彼の傷を直すのだ。
体くらい、存在くらいなんてことない。
あなたを失うことに比べたら、なんてことないのだ。



