「さと…か」
息がある。その事実にまだ救われて、私は駆け寄った。
「天稚彦さま!な、なにが……ううん、どうかしっかり!」
むねだとおもったが、微妙に下だったため即死は免れたのか。
あと神様なのも幸いしているのかも。
「村の人たちですか!?国を守ろうとあなたを…」
「…ちがう、んだ。母上様だ…」
「え」
「この矢は…母上が僕にくださったものだ。だから…」
そう言われて矢を見て、背筋がぞっとした。
この矢。
昨日雉に放ったものと同じものだ。
「天稚彦さま、あの、」
どうしよう。
わたしは、何をすればいい?
もしこれが昨日の矢ならば、わたしはどうすればいい?
素戔鳴尊の命令を聞くなんて、なんて馬鹿なことをしたんだ。
わたし、わたしは……
「ふふ、泣かないで」
震えながら手が伸びて、私の頬を拭う。
涙を吹いてくれてると認識するのに少しかかった。



