そして翌日の早朝。
事件は簡単に起こるのである。
最近は起きるのがずっと遅くなった彼なので、わたしも遅くなりつつあった。
この屋敷の童女ではないし、仕事を無理にする必要も無いから、暇な時間は人間を見に行ったり眠ったりしていたのだ。
鬼は獣のようなものだし。
だからその日も、ゆっくりと眠っていた。
ドゴォオン……という凄まじい音で目を覚ましたのだ。
屋敷ごと壊れるような大きな破壊音が聞こえ、飛び起きる。
音のありかは明らかに彼の部屋だった。
早まる心臓をそのままに走って部屋へ向かい、礼儀もへったくれもなく障子を開ければ砂煙が立ち込めた。
目を開くことも難しく、口元を袖で隠して一一わたしは彼を探した。
ようやく煙が晴れてきて、そしてわたしは瞠目する。
「あ……あ……」
どういう、ことだ。
なんで、こんな、わたしはまだ寝てるのだろうか?
天井の一部が抜けていて、砂煙の原因はそれだった。
なぜ抜けているか、それは一一天稚彦の胸に、矢が深々と刺さっているから。
天から降ってきた矢が、彼を射抜いたのだ。



