中庭に草にまぎれているそいつは、突如口を開いて。
“ずいぶん向こうはお前にご執着のようじゃねぇか。ええ?よかったなぁ”
「だまれ。まああんたよりかはずっといい主人だから、向こうに行っちゃおうかな」
“好きにしろ。別にお前の代わりなんていくらでもいるし。……じゃなかった、命令だ”
「なに」
“明日、上から使者が来る。鳥としか伝わってねぇんだが、まあ鳥だ。それをとにかく殺させろ”
「え?」
つい聞きかえした。殺させる?
「それは、わたしが殺しちゃいけないの?」
“ああ。天稚彦に殺させるんだよ”
素戔鳴尊(子鬼)は、どこか伝達風だった。
彼自身が命令したわけではなく、誰かから言われたみたいな。
「何の意味が……ううん、誰からの命令?」
“お前ごときに言うかよ、ばーか”
あっかんべー、と行動も移す子鬼。
“あなたを殺そうとしている街の連中の遣いです!やっつけて!とか言って、とにかく殺せ。いーな?”
しゅう、と風に霧散していく子鬼。
言いたいことだけ言ったなぁと見つめながら、言われたことを反芻した。



