すると彼は嬉しそうに笑って。
「じゃあ君は今日から“僕とおしゃべりする係”に任命しようか。お世話係じゃなくて、お友達係!」
「ははっ」
とんでもないことを言い始めた彼に、声を出して笑ってしまった。
「何を言ってるんですかあなたは…!はははっ、そんなの仕事じゃない…」
そして気づいた。
“笑ってる”
わたしが、声を出して。
「ふふ、初めて笑顔を見た」
「し、失礼致しましたっ」
「いいんだよ。君の笑顔が見れて、本当に幸せだ。なんだ、笑ったらすごく可愛いじゃないか」
可愛いといわれ、顔が耳まで熱を帯びる。
「……あの」
「なんだい?」
「ありがとうございます。わたし、初めて心から笑ったんです。………何かしてもらったら謝るんじゃなくてお礼を言うものだって仰ったから、その…」
笑ったことがなかった。
作り笑いだけをずっと繰り返してきて、本心から面白いと思い笑ったことなどない。
ずっと嬉しそうに笑う彼が目に付いたのも、多分そのせいだった。
笑いをくれた。
この人は、どこまでわたしを目覚めさせるのだろう。
どこまでわたしの知らないわたしを増やしていくのだろう。
あなたが笑うのがいけないのだ。



