こんなことを感じたことがなかったから、すごく驚いた。
痩せた頬を見て、心が痛くなる。
見てられないとまで思った。
さすがにずいぶんと怪しんできた彼に、わけを聞かれた。
これは仕事と言い聞かせ、必死に知らないふりをした。
また、自分が磨り減ったのを感じた。
「大国主、あなたにいいお知らせです」
「な、なんでしょうか?」
「母があなたの神籍を用意していいと。天津神にしてもいいと仰ってます」
「え!」
大国主の部屋の前を通った時、そんな声が聞こえた。
大国主はもともと天津神だ。
要するに神様だった。
たまたま因幡の白兎を助け、超絶美女に惚れられ、嫉妬した兄弟に殺されかけ、神である親が根の国に隠し一一1回、彼は死んだとされる。
要するに神であることを破棄したのだ。
根の国から脱する際、素戔鳴尊に葦原の中津国を平定するようにと命令され、今度は国津神として君臨した。
要するに。
葦原の中津国平定の任務を終えれば、彼はまた神となれる。
天照大御神がそこまで言うなんて、よほど葦原の中津国が欲しいのか。
「……いえ。私はこの国を愛してます。せっかくのご好意ですが、ご辞退させていただきます」



