昔から、わたしは嫌なものだけを見てきた。
神にあらがった鬼がまっぷたつにされたり、罪を課せられた神が処刑されて意思無き霊力に分解されたり。
血と涙と怒りと罪に満ちた場所で生きてきた。
目の前に首が飛んできても、まるで鞠が飛んできたように交わして、そのままあるきつづけるくらいの慣れはあった。
死んだものに涙をする家族に同情したり、哀れんだりするほど純情な生き方をしてこなかった。
うるさいなぁ、くらいにしか、芽生えなかった。
そのはず、なのに。
わたしはさいきんおかしかった。
というのも。
天稚彦が下照比売に最初に酔わされてから随分と時がたった。
毎晩のように酔わされ続け、中毒になっていた。
朝起きるのが遅くなり、記憶のない時間が増えていく。
すっかりやつれていて、見る影もなかった。
そんな姿を見て。
かわいそう、なんて思ったのだ。



