食べるのがもったいないな、と思いつつ、味が知りたかった私は、そっと口に含んでみた。
素朴な甘さに、ふわふわもちもちの歯ごたえ。
単純だけどとても美味しい。
「おいしいです」
そう言えば、嬉しそうに頭をなでられる。
「……」
ああ、変だ。
きづかないだけでか、接触の度に太陽神に食われてるのだろうか。
それこそおやつ感覚で。
だって、触れた箇所から熱を帯びるのだ。
いつか食い尽くされるのかもしれない。
「……あ」
そのとき、視線のはしに小さなものが視えた。
子鬼。式、ともいうそれは、くちゃくちゃのしわだらけの小さな鬼。
素戔鳴尊の使い捨ての遣一一。
「どうかしたかい?」
「……いえ…」
忘れていた。
何を楽しんでいるんだ、わたしは。
わたしは、任務をこなすためにあるのだ。
任務をこなして、少し地位を高くして、褒美に霊力をたくさんもらって一一あんなところ、抜け出してやるんだ。
根の国なんてまっぴらごめん。
こんな美味しいものがあるここに、わたしはずっといたい。
真っ暗な辛気臭いとこは、もう嫌だ。



