「私は君にとても感謝をしてるんだ」
頭をなでられる。
壊れ物に触れるように、優しく暖かく。
「下は荒くれ者が多いと聞いていた一一騙しあい、貶し合い、殺し合うと。
だから怖くて……そんなとき、純粋な子供ほど救われるものはないんだ。
小さなお手手で働いてくれてありがとう。これは、足りないかもしれないが、ほんのお礼だ」
「……」
お礼、なんて。
生まれて初めて言われた。
なんだこれ、心がぽかぽかする。
暖かい、まるでお茶を飲んだような、心から温まる心地よさ。
同時にむずがゆかった。
そんな大それたことしてないのに、こんな丁寧にお礼を言われたことに。
「……あっ、」
気づけば、もう代金を支払い終わってしまっていた。
包み紙に包んでもらって、風呂敷でまた包む。
「ありがとうございました!」
店主が嬉しそうに頭を下げて、手に高そうな金細工の串が握られてることに気づいた。
……た、高そうだ。



