「に、人間の前ではやめてくださいっ」
「ダメなのか?」
「当たり前です!」
わたしでさえ、人間の前で変幻はしないのに。
バカにもほどがある。
そして店主が恭しく着物を持ってきた。
「わあ、いいね!」
青とも緑ともつかない不思議な色をした、珍しい色。
白と金で雲と小花が織られている。
思わずわたしは手で制した。
ぎょっとした彼は、首をかしげた。
「ど、どうしたんだ?好みではなかった?」
「あああの!!」
嫌な汗が伝う。
「これ!絶対高価です!」
「お嬢様お目が高い!これは隣城のお姫様のだったんですよ〜」
ふ、ざ、け、る、な!!
こんな馬鹿高いの買わせるわけには行かない、他人の施しはありがたいから貰う性分だけど、これはドがすぎる。
「あ、天稚彦さま。わたしはただの屋敷仕えの童女一一身に余る着物です!」
「そうかな?」
そっと着物を合わせに持っていき、太陽のように微笑んだ。
「趣味が悪いと馬鹿にされる私でもわかる一一これは、君によく似合っているよ」
「……に、似合っているとかじゃなくって!」



