他人の怨念で作られた力で、汚い根の国の霊力で塗り固めた体。
美しさなんて、ないはずだ。
いや、天津神の彼は、変幻なんてとっくに見抜いてるのかもしれない。
私が鬼だと、バレて……
読もうと意識を集中していると、彼に手を引かれた。
慌ててついていくと呉服屋さんに連れていかれた。
「ここは、着物は売ってないのかい?」
呉服屋とは、基本布や織物を売って仕立てる所だ。
着物なんてあるはずない。
何考えてるんだこいつ。
「おや旦那、急なお入用ですか?」
「ああ、彼女に着物をと…」
「質屋に行ったほうが早いかと思うんですが」
「…人の使ったものを彼女に着せたくないのだ」
瞠目した。
ほんっと、天津神って何考えてるんだ?
「なら旦那、今朝返品された着物がございます」
「本当!?」
「しかし大人用で……このお子様には少々大きいかと」
「……」
苦い顔をした彼は、顎に手をあてて。
「苦手なんだよなぁ、物を変えるのって……僕にできるかなぁ」
なにやらぶつぶつと言い始めた。
……まさか、こいつ。
「天稚彦さま、まさかとは思いますが……着物を縮めるつもりでは!?」
「?そのつもりだが?しかし僕は最近ここに降りてきたばかり、物を改変するのはとても不慣れで……申し訳ないが失敗するやもしれん」
あんぐりと口を開けた。
このアホ神、力を使うのに迷いがない。



