課長の瞳で凍死します ~旅支度編~

「バスで叫ぶなーっ」

 やはり、お前は崖から突き落とすっ、と言われる。

 ええーっ!? と声を抑えて叫ぶ真湖たちを見て、隣の席のおばあちゃんが笑っていた。

 雅喜は、おばあちゃん越しに、反対側の窓の外を見ながら言う。

「まあ、とりあえず、はぐれても、宇宙まで行かずに、伊勢に来いよ」

「わかってますよー。
 だいたい……」

 更に言い返そうとした真湖だが、なんだか手が温かいと気づく。

 見ると、雅喜の手が真湖の手の上に乗っていた。

 ちょっとだけ。

 恥ずかしそうに、あまり重さをかけずに、そっと、軽い感じで。

 顔は他所を向いたままだ。

 そんな雅喜の横顔を見て、真湖は微笑む。