課長の瞳で凍死します ~旅支度編~

  


「もうほんと、寿命が縮みましたよ~」
 真湖はバス停でもまだ夢の話をしていた。

 なんとなく振り返る。

 あの横断歩道が見えた。

「夢の中で、ママ~って言ったあの子、課長に似てた気がするんです」

 一生懸命こっちへ来ようとしてた――。

 そう雅喜に告げる。

 そういえば、あの子、ママって呼んでたけど、周りには私しか居なかったな、と思ったとき、雅喜が、
「……そうか」
とだけ言って笑った。

 子どもの幻を追っていた真湖は、バスが来ているのに気づかなかった。

 慌てて、
「あっ、すみませんっ」
と乗ろうとしたが、スーツケースは二個とも雅喜が持って上がってくれていて、振り返った雅喜が、

「ほら」
と階段のところから、早くしろ、と言うように手を差し出してくれる。

 そ、そうだよね。
 新婚旅行なのに、置いてくはずない

 そんな真湖の安堵を読んだようにバスの中を歩きながら、雅喜が言った。

「いや、やっぱり、遅れたら、置いてくことにした」

 ひいいいい。