課長の瞳で凍死します ~旅支度編~

 



 あーあ、新婚旅行なのに、ととぼとぼ、真湖が次の駅で降りたとき、ちょうど雅喜の乗るのぞみが、駆け抜けていくのが見えた。

 か、課長~っ。

 見えるはずもないのに、新幹線の小さな窓からこちらを見、あ、という顔をする雅喜の幻が見えた。

 課長と一緒に新幹線に乗って、課長と一緒に伊勢を歩くはずだったのにっ。

 初めて雅喜と新幹線に乗ったときの浮かれた気持ちを思い出し、泣きたくなった。

 目の前を通ろうとした駅員さんの腕をむんず、とつかむ。

 え? と若いその駅員が振り返った。

 なんだか、さっきの車掌さんと似て見えるが、制服のせいだろうか。

 それとも、今の自分には、課長以外の顔は判別がつかなくなっているのだろうか。