課長の瞳で凍死します ~旅支度編~

 すると、そんな阿呆な問いかけをする客は他にも居るのか。

 車掌さんすぐに笑顔で答えてくれた。

「八時三十八分発のひかりですよ」

「いやーっ。
 新幹線間違えましたーっ!」

 アホかーっ、と聞こえた。

 車掌さんはそのやりとりのせいか、足を止めてくれていた。

 顔は苦笑いしていたが。

「だって、人間、今にも出そうな方に乗っちゃうじゃないですかーっ」

 そう叫び返しながら、……悪夢だ、と思っていた。

『わかった……。
 俺は先に参拝して、松坂牛のすき焼きを食べてるからゆっくり来い」

「な、なに言ってるんですかっ。
 なに言ってるんですかーっ。

 なんでそんな薄情なんですかーっ」

 新婚さんなのにーっ、と恥ずかしい絶叫をする。

 いや、私が悪いんだが……。

 スマホを切ったあと、
「大丈夫ですか?」
と車掌さんに訊かれ、まったく大丈夫じゃないのに、

「大丈夫です」
とぼんやり答える。

「きっと、ご主人、駅で待っててくださいますよ」

 そう若い車掌さんは笑顔で言ってくれた。