桜の花びら、舞い降りた


「ううん、大丈夫。それにバランスよく乗ってないと、風で余計に揺れそうだし」

「いいからおいでって」


圭吾さんが握っていた手を引いて、私を無理やり彼の隣に座らせた。
その拍子に観覧車がグラリと揺れる。

――こ、怖い。
だから危ないって言ったのに。


「くっついていれば暖かいだろう?」

「――う、うん……」


確かに暖かいには違いない。
でも……そうしたら、このうるさいほどの心臓の音はどうしたらいいの?
本当に勘弁してほしい。

ふと、左の頬に圭吾さんの視線を感じて、反射的にそちらを見る。
当然のごとく合った目。
とても優しい眼差しが私を包み込むように注がれるものだから、どうしたらいいのかわからなくなる。

そのとき思い出したことがあった。
圭吾さんは私を見ているわけじゃない。
たぶん、私を通して美由紀さんを見ているんだろう。
うりふたつだという彼女を私に重ねて。

なんだか、美由紀さんのことがすごく羨ましかった。
こんなふうに見つめてくれる圭吾さんがいる、美由紀さんのことが。
それと同時に、なぜか胸の奥がキリキリと疼いた。


「もーやだな、圭吾さんってば。私、美由紀さんじゃないからね?」


不可思議な心の誤作動を消し去ろうと、咄嗟におどけて笑い飛ばす。
圭吾さんは目を見張って一瞬驚いていた。


「……ごめん、そんなつもりじゃないんだ」


鼻から息を漏らすように圭吾さんも笑う。


「そう? ならいいけど」


目を逸らして手にハァっと息を吹きかけた。
白く煙った息は、すぐに冷たい空気に溶けていった。