しばらくブラブラと歩いていると、丸太小屋に背高のっぽの赤い三角屋根が目に入った。

この建物はなんだろう。
こんなもの、昔からあっただろうか。
そんなことを考えながら三角屋根を見上げる。

家を出たときには細かい雪だったのに、いつの間にやら大きなぼた雪に変わってしまった。
少し空の様子を見よう。
その建物の軒先を借りることにした。
どんどん真っ白に姿を変えていく森。
それをぼんやりとしばらく眺めていると、不意に建物のドアが開いた。

そこから顔を覗かせた俊さんを見て、私は思わず「キャー」なんて悲鳴を上げてしまった。
だって、稲妻が描かれた坊主頭だったのだから。
いかつい頭を見て、恐怖を感じないほうがおかしい。

私はそこから駆け出し、その結果、深くなった雪につまづいて豪快に転んだ。
そこに手を差し伸べてくれたのが、その坊主頭の俊さんだった。
悲鳴を上げて逃げた少女に不快な感情も抱かず、無表情の顔で。

その手を取るのを躊躇ったのは一瞬だった。
無表情なりにも、その目がとても穏やかでリスのように愛らしかったから。
最初に感じた恐怖は、すぐに消えてしまった。

俊さんはすっかり体の冷えた私を中に招き入れてくれ、そこで初めてここがアトリエだということを知ったのだ。
その風貌からはとうてい想像のつかない、綺麗なパステル調の水彩画。