桜の花びら、舞い降りた


サラサラと適当に輪郭を描き、色をのせる。
続いて黒い絵の具で髪の毛だ。

――あっ、ちょっと長すぎかも。
そう思ったところで、消すことはできない。
かわりに顔を大きくすることでカバーしてみたものの、そうなるとこれから描く体まで大きくしなくてはならない。
上半身まで描いたところで、圭吾さんをモデルにしたことを後悔し始めた。
人じゃなくて、椅子にでもすればよかった。
難しすぎる。
けれど、ここまできてしまった以上、後戻りはできない。

もう、いいや。
どのみち描き直したところで下手さ加減に変わりはない。
そうして半ばやけっぱちで完成した絵は、想像どおりに見るも無残なものだった。
もはや、人にすら見えるかどうか。
やけに右手は長いし、なにより顔が大きすぎる。
バランスがひどいのだ。


「これはなにを描いたの?」

「わっ……」


不意打ちで圭吾さんに絵を覗き込まれて、思わずイーゼルごと抱え込むようにする。
ところが、制服に絵の具が付くんじゃないかと遠慮したものだから隙間だらけ。
圭吾さんにしてみたら、隠しているとはとても言えない体勢だった。


「……もしかしてこれ、俺?」

「え!?」


圭吾さんがまさか気づくとは思ってもみなかったから、声が弾んでしまった。