“いいから”なんて、私は“よくない”のに。
こうなったら、正直に下手くそな絵を披露して、二度と「一緒に描こう」とは言えないようにしてしまおう。
圭吾さんの誘いを封じ込めるには、もうそれしかない。
密かな闘志を胸に絵筆を持ち替えた。
でも、なんの絵を描こう。
圭吾さんのように頭の中にあるものをイメージして描くのは難しいし。
このアトリエにあるもので、なにかモデルになるものはないだろうか。
絵筆の柄で顎を突きながら部屋を見回す。
ところが、殺風景なアトリエ内には椅子やテーブルや棚といったものしか題材がなくて、それには心惹かれない。
窓の外に目を向けてみても、雪が降っているほかに見えるものはなし。
室内に目を戻して、圭吾さんが目に留まった。
そうだ。圭吾さんにしよう。
絵を描く圭吾さんを、私が描く。
題材を決めると、イーゼルをズルズルと動かした。
隣に立っていては、圭吾さんを見ながら描けない。
圭吾さんは一瞬だけ私のほうを見たけれど、またすぐにスノードロップへ視線を戻した。
さてと。なにからどう描けばいいんだろう。
絵筆を真っ直ぐ立て、それを圭吾さんの姿と重ねる。
グリーン上でゴルファーが球筋を見極めるようなポーズを取った。
そうしたところで上手に描けるわけではないのだけど。
肌色の絵の具を練り出し、水と混ぜて筆をチョンチョンとつける。
まずは圭吾さんの顔から描く算段だ。



