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今日も雪は降っていた。
「ただいまー」
アトリエのドアを開けながら、まるで自分の家かのごとく挨拶をする。
それが自然に出てくるほど頻繁に通っていることに、今さらながら気がついた。
圭吾さんがここに居候するようになってからは、毎日かもしれない。
カバンを玄関のそばに置き、コートを脱いで壁のフックに掛ける。
「あれ? 俊さんは?」
その姿は見えない。
「今日も個展の準備じゃないかな」
答えたのは圭吾さんだった。
その圭吾さんは、俊さんがいつも使っているイーゼルの前にいた。
左手にパレット、右手に絵筆を握りながら、こちらを振り返る。
「なにか描いてるの?」
「うん、俊さんの見よう見真似でちょっとね。好きに使っていいって言ってもらったから」
圭吾さんの横から顔を出すようにして覗き込むと、それは花のような絵だった。



