真剣な表情を崩さない私を見て、香織が笑うのを止める。
一旦持った箸をお弁当箱の上に置いた。
「……本気で言ってる?」
香織は真実を探るように、鋭い目を光らせる。
私はその目を見つめたまま、ゆっくりと頷いた。
「どういう……ことなの?」
茶化さずに聞く態度に変わった香織に、私は昨夜のことを事細かに話して聞かせた。
お母さんとケンカしたことは、恥ずかしいからさすがに伏せおくけれど。
そこは圭吾さんとはなんの関係もないことだから問題ないはずだ。
すべてを話し終えると、香織はしばらく放心状態のまま黙り込んでしまった。
「……そんなこと、本当にあるんだ」
ポツリとつぶやく。
「私も未だにちょっと信じられない」
「パラレルワールドみたいなものなのかな」
香織が視線を宙に彷徨わせながら言う。
「……パラレルワールド?」



