昨夜、頻繁に入っていた香織からのLINEには返信できずにいた。
既読にしてしまった手前、ひとまず『明日学校で話すね』とだけ。
というのも、あまりにも込み入った話すぎて、簡潔に説明することができなかったからだ。
休み時間のたびに香織に聞かれたけれど、周りに人もいたし、十分ではとても話しきれないと思って、お昼休みまで延ばしてしまった。
香織にしてみれば、ただ単に見知らぬ男の人を俊さんのアトリエに保護したというだけの話に過ぎないのに、なんでもったいぶるのかといったところだっただろう。
「あの人ね、過去から来たんだって」
ワンクッション置かずに単刀直入に話し始めた。
香織は一瞬動きを止めたあと、ケラケラと笑う。
「ちょっと亜子、エイプリルフールはまだまだ先だよ。っていうか、そんなわかりやすい嘘もないけどね」
普通はそういう反応だろう。
でも、構わずに続ける。
あの俊さんも信じたという、ちょっとした自信もあったのかもしれない。
「昭和四十年からタイムスリップしてきたんだって」
「だから、なんの冗談なの?」
「嘘でも冗談でもないの」



