桜の花びら、舞い降りた


◇◇◇

登校途中に寄ったコンビニで買い込んだサンドイッチとおにぎり、それからオレンジジュースをテーブルに広げた。

お昼になると香織とふたりでたまに忍び込む化学室は、今日もまたアルコールや薬品の匂いを漂わせていた。
冬休みでしばらく人が入らなかったせいもあるのか、いつもよりも匂いがきつい気がする。
暖房も入っていないから、教室よりもずっと寒かった。
私たちの吐く息も白く舞い上がる。

始業式のあとからすぐに通常通りの授業なんて、いったいなんの修行なのか。
お正月を越して怠けた体と頭には、かなりつらい。


「お弁当は?」


小さなバッグから弁当箱を取り出しながら香織が尋ねる。


「今日はなし」


お母さんとは絶賛ケンカ中だ。
確かめてはいないけど、きっとお弁当は作ってくれていない。
朝ごはんだって食べずに出て来たおかげで、すっかり腹ペコだ。
昨夜は俊さんのところでカップラーメンだけだったし。


「それで昨日の男の人はどうしたの?」