首を捻る、圭吾さんと私。
俊さんはひとり納得したように何度も頷きながら、再びキッチンへと戻ってお湯を沸かし始めた。
そしてしばらくすると、隅っこに寄せてあった小さなテーブルをストーブの前に移動させ、俊さんは熱湯を注いだカップラーメンを三つ並べた。
「お湯を入れるだけでラーメンができるの……?」
圭吾さんはまだ半信半疑のようだ。
物心ついたときには既にカップラーメンを普通に食べていた私には、考えられない反応だ。
圭吾さんは食い入るようにそれを見つめた。
まるで、実験結果をワクワクと待つ子供みたいだ。
「よし、もういいだろう」
俊さんは腕時計を確認して合図をすると、圭吾さんの分のふたをはがしてあげた。
割り箸を割って私が手渡す。
「……いただきます」
圭吾さんはおそるおそるといった様子でカップラーメンを口に運んだ。
どうだろう。口に合うかな……。
俊さんと私が見守る中、圭吾さんは顔を上げた。
「美味しい」
ポツリと圭吾さんが漏らした感想に、俊さんと私は微笑み合った。
カップラーメンの美味しさは、国はもちろん時代も超えるのだ。
やっぱり二十世紀の天才的発明だ。
ものすごい勢いで食べ始めた圭吾さんに続けとばかりに、私もズルズルとすすった。



