私が返事をすると、圭吾さんは突っ立ったまま不思議そうな顔でカップラーメンを見つめていた。
――あ、そうか。
もしかしたら、圭吾さんの時代にはそんな食べ物がなかったのかもしれない。
「ラーメンだよ」
「……ラーメン? あれが?」
圭吾さんの視線が、私の顔とカップラーメンの間を行き来する。
彼の反応に気づいた俊さんは興味深そうな顔をして、カップラーメンを持ったままこちらに来た。
「そうか。そうだよな」
ぶつぶつ言いながら、圭吾さんを見る。
「圭吾くんは、昭和四十年から来たって言ってたよな」
「……はい」
圭吾さんは近づいた俊さんから若干、体を引かせて頷いた。
「カップラーメンが世に知れ渡ったのは、確か浅間山荘事件があったときだとか聞いたことがあるから……。となると、もっとあとのことだ」
“あさまさんそう事件”?



