俊さんはそう言いながらも、キッチンへ向かって戸棚をごそごそとし始めた。
突き放すようなことを言っても、結局のところ俊さんは優しいのだ。
それを知ってつけ込む私は、やっぱり悪い女子高生なんだろうか。
「あれ? 亜子ちゃん?」
タオルで頭を拭きながら、『どうしたの?』というような目をした圭吾さんが現れた。
帰ったはずの私がいたのだから、訝るのも当然だ。
居心地の悪さに肩をすくめていると、「反抗期だ」という容赦のない言葉が俊さんから飛んできた。
「ちょっと俊さん!」
反抗期なんかじゃない。
圭吾さんは目を丸く見開いたあと、優しく微笑んだ。
納得してしまったということか。
恥ずかしさに目を逸らした。
圭吾さんにまでそんなことを言わなくてもいいのに。
「ふたりともこれでいいだろ?」
俊さんがキッチンでカップラーメンを高く掲げる。
「うん」



