桜の花びら、舞い降りた


「だって、あんな歳にもなって彼氏とか信じられない」


仕事だとか言ってたけど、絶対に嘘だ。
お父さんが亡くなって二年しか経ってないのに。
そんなに簡単にほかの人を好きになんてなれるの?


「つまり亜子は、お母さんの興味が自分以外に向いてることに腹を立てているわけか」

「なっ……違うってば!」

「母親だって、ひとりの人間だぞ。自分だけのものだとか思ってるなら、正真正銘のガキだ」

「違うの。そうじゃない」


私のことだけを見ていてほしいんじゃない。
むしろ、それは逆だ。


「ならあれか。お父さんのことをずっと好きでいてほしいとかいうやつか」


俊さんの言葉にぐっと喉を詰まらせた。
図星だったからだ。


「それこそ亜子のわがままだな」


俊さんは歯に衣着せずばっさりと言い放った。
だって、三人でずっと仲良くやってきたのに。
笑いの絶えない家だったのに。